(『貧困襲来』湯浅誠著から抜粋)
生活保護の分野では、2005年4月から厚生労働省の掛け声の下、各自治体で『自立支援プログラム』が始まりました。
このプログラムは、政府の言う「再チャレンジ」や「成長力アップ」の目玉の1つです。
プログラムの多くは「就労支援プログラム」で、内容は次のものです。
①
生活保護の実施機関である福祉事務所に、ハローワークのOBを嘱託で配置する
②
母子家庭用の就労支援センターを作る
③
母子生活支援施設とハローワークの連携を強化する
①~③は、求人情報を提供したり、面接試験の練習をさせたりします。
これで母子家庭の生活が良くなるとは、とても思えません。
母子家庭の多くは、すでに母親が働いているのに生活が苦しいのです。
母子家庭を支援したいのであれば、保育園や学童保育を充実させたり、公営住宅を提供したりすればいいのです。
それなのに「住生活基本法」ができて、国土交通省は「もう公営住宅は建てない」と決めました。
①~③による自立支援は、大半は支援ではなく「労働市場への放り出し」です。
野宿者への自立支援プログラムは、2000年秋に始まりました。
こちらも就職の斡旋をしますが、就職先は清掃や警備といった不安定なものが中心で、月収は15~16万円です。
クビ切りにあえばすぐに生活は苦しくなるし、上手く行かずに再び野宿生活に戻った人も少なくありません。
東京都は、野宿者への自立支援プログラムを、彼らが生活保護に流れないために作りました。
これは制度担当者が自分で言っていたから、間違いありません。
支援が上手くいかなかった人は、生活保護を紹介されるのではなく、路上へと戻されます。
生活保護の申請については、職員の口から聞くことはまずありません。
そして自立支援センターは、1度しかチャンスをくれません。
「ホームレスの大半はやる気がないから、1回きりのチャンスを与えて、やる気のある人だけ救い上げればいい」と言っているかのようです。
(2014.7.23.)