(『貧困襲来』湯浅誠著から抜粋)
労働や生活の格差を解消するとされる政策が、安倍晋三・政権の打ち出す『再チャレンジ』です。
これは、「労働市場に参入するための再チャレンジ」を意味します。
再チャレンジでは、生活保障はしません。
それどころか、生活保障を削る中で出てきた政策です。
2006年12月25日に発表された『再チャレンジ支援の総合プラン』では、冒頭に「この予算は、困っている本人たちにはいっさい渡さない」旨が書いてあります。
(就労支援センターやハローワークなどに予算を投じている)
このプランの2007年度の予算は、1720億円でした。
再チャレンジは、生活保障の予算を削ったお金を回すことで成立しています。
しかし、生活保障を外しながら再チャレンジをさせる事には無理があります。
安倍政権は自己責任論が大好きで、再チャレンジを進めていますが、失敗した時の保障は用意しません。
恐いことに、安倍政権はこれを「国民運動にする」と言っています。
国家主導で再チャレンジを行わせようとしています。
安倍政権は2007年1月末に、『成長力底上げ戦略構想チーム』なる組織を立ち上げました。
そしてわずか2週間で、「経済成長によって底上げ(貧困の解消)ができる」という戦略を作った。
中身は、『再チャレンジ支援の総合プラン』と大差ありません。
経済成長すれば、貧困は解消するのでしょうか。
「する」と言っている代表が、竹中平蔵さんです。
彼はずっと、「規制緩和のおかげで、格差はこの程度で済んだ。規制緩和をやってなかったら、もっと惨い状態になってましたよ。」と言っています。
竹中さん達は、正しいのでしょうか?
今(2007年)、企業は史上最高の利益を出しています。
では、私たちの生活は豊かになっていますか?
大企業の経営者は、「まだ景気回復の入り口だ。まだ余裕はない。」と言います。
小泉純一郎・前首相も、「痛みをともなう改革は、豊かさへの道だ。今は我慢してくれ。」と言いました。
冷静に見れば、「そのうち良い事があるから、今は我慢しなさい」や「規制緩和してなかったら、もっと惨い事になってたんだぞ」というのは、ほとんど脅しです。
私たちは脅されていると、もういい加減に認めましょう。
「いま利益を分配したら、倒産してあんたも路頭に迷うんだよ」と、経営陣は言います。
だが企業が倒れても、私たちがきちんと暮らしていければ問題はないです。
そもそも、「会社と社員が運命共同体など、もう古い。使えなくなったら捨てる」と、経営陣は言っています。
それならば、私たちは自分の生活を守ろう。
「いま利益を分配しろ」と言おう。
(2014.7.24.)