安倍政権を見極める⑰ 法人減税
強者に寄り添う政治 低い実効税負担の問題

(サンデー毎日 2014年11月30日号から抜粋)

安倍政権は、来年度から法人税を減税する方針である。

政府は、「法人実効税率は、来年度から2.5%以上の引き下げを目指す」と表明している。

法人実効税率とは、法人税や法人住民税などを合算した税率をいう。

東京都の場合、2012~13年度は38%、14年度は35.6%である。

OECDの統計では、日本は加盟34ヵ国のうち、アメリカに次いで2番目に税率が高い。

これを根拠に、「諸外国に比べて税率が高すぎる」と大企業は主張している。

しかし、富岡幸雄(中央大・名誉教授)は、著書の『税金を払わない巨大企業』でこう説く。

富岡

「日本では税制に欠陥があり、政府の打ち出す優遇税制によって、法人税は低く抑えられています。

企業の納税実態は、『法人税の納付額÷税引き前の純利益=実効税負担率』で得られます。」

この『実効税負担率』で見ると、2014年3月期の場合、「三菱UFJ FG」「三井住友FG」「みずほFG」「ソフトバンク」「東京電力」は、負担率は1%以下である。

(※FGはフィナンシャルグループの略である)

トヨタの豊田章男・社長は、2014年3月期の決算発表の時に、「トヨタは日本国内では、2009年から1度も税金を払っていない」と述べた。

トヨタが税金を払わなかったのは、次の優遇税制のためである。

① 受取配当等の益金の不算入

国内外の子会社から受け取る配当収入を、収入から除外できる

② 外国税額の控除

海外子会社が外国政府に納付した税金は、本社グループが払ったものと見なし、税額から差し引ける

③ 試験研究費の税額控除

研究費の1割程度を法人税から差し引く

④ 欠損金の繰越控除

赤字になった場合、その赤字を繰り越して、翌年以降の黒字と相殺できる

菅隆徳(税理士)

「今のトヨタは、海外の子会社が稼いだ儲けを、本社が配当として受け取る構造になっています。

2009年からは、海外子会社による配当収入は、95%を非課税にできます。
トヨタは、その恩恵を受けています。

多国籍企業は低い税率の国で儲けられますが、中小企業は海外に進出できません。
ですから、大企業優遇の税制です。」

法人税の申告では、「単体納税の方式」と、グループ全体で連結して申告する「連結納税の方式」から、選択できる。

三菱UFJ FGは、単体申告方式を採り、2014年3月期の実効税負担率は0.3%だった。

同社傘下の会社は別途申告し、三菱東京UFJ銀行の実効税負担率は19.2%だった。

富岡

「持株会社は、子会社の株だけではなく、他社の株も買って多額の配当を受け取っています。

配当のうち、子会社や関係会社からは非課税となるし、他社の株では50%にしか課税しない仕組みのため、大企業に有利です。」

NTTドコモとJR東海は、35%を超える負担率(本来の負担率)だが、それは国内事業が中心のため優遇税制を受けにくいからだ。

アメリカでは、アップル、アマゾン、グーグル、スターバックスなどの租税回避が、問題になっている。

「アップルは何十億ドルもの利益を海外に移転し、脱税をしている」と、米上院でアップルのクックCEOは追及された。

大原達郎(公認会計士)

「アマゾンやスターバックスは、コーヒーの製法といった知的財産権や商標権を、税率の低い国に設立した子会社に移転させます。

そして、各国の現地法人から権利使用料の名目でカネを集めるのです。」

富岡

「私の試算では、公正に課税をすれば、法人税が20%でも今の1.5倍の税収になります。

きちんと大企業から徴税をすれば、消費増税など必要ありません。」

○ 村本のコメント

多国籍企業の税逃れ(ボロ儲け)は、いま世界で大問題になっています。

富岡さんも述べていますが、きちんと大企業から税金をとれば、税収は確実にアップし消費増税は必要ありません。

この問題については、私が勉強した事を『世界情勢の勉強 脱税』にアップしています。

さらに私の提案のページにも、記事を書いています。

(2015年5月15日に作成)


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