(『日本の課題40』池上彰著から抜粋)
野田佳彦・首相は、くり返し「現在の世代が受ける社会保障は、現在の世代で負担しなければならない」と言った。
彼は、借金による社会保障をやめようとした。
日本は東日本大震災により、「復興のための増税」と「社会保障のための増税」という、2本柱で増税を考えなければならなくなった。
野田内閣は、復興財源には「所得税」を、社会保障には「消費税」を、充てようとした。
将来へ負担を先送りしたくない彼は、復興予算11.2兆円の財源を確保するために、所得税を上げようとした。
そして、「10年で11.2兆円を返せるように、増税をする」と主張した。
しかし、増税率が高くなる事に、自民党と公明党が強く反対したため、「25年で返済する形で増税をする」と決まった。
これにより、所得税の増額は、年収600万円の世帯で2840円に抑えられた。
10年→25年への延長は、ツケの先送りの典型である。
野田首相は、消費税率の引き上げも目指し、反対派を押し切って可決させた。
日本で消費税を5%上げた場合、年収300万円の世帯では13.4万円、年収500万円の世帯では13.3万円、700万円の世帯では16.8万円の負担増になるそうだ。
実は、現在の日本の年金制度は、消費税を10%に上げる事を前提にして設計されている。
基礎年金の国庫負担は、3分の1だったのが、2009年から2分の1に引き上げられた。
これを決めたのは、2004年当時の自公政権である。
彼らは、「5年後に消費税を上げて、年金の財源にする」と確約して、法案を成立させた。
ギリシャでは財政が破綻したが、破綻するまでは「61歳から現役時代の収入の8割の年金」をもらい、「公務員の給料は毎年のように昇給」していた。
その裏では、毎年2兆円の脱税が行われていた。
ギリシャの破綻は、問題の先送りの結果である。
(2013年8月1日に作成)