マラリアとマラリア・ワクチン
(2022.1.19~23.)

前回の日記(ビル・ゲイツと蚊の遺伝子操作)では、マラリアやデング熱の犠牲者を無くすという名の下に、蚊の遺伝子を操作して蚊を絶滅させる研究が大々的に進められている事を書きました。

その研究の危険さや、ビル・ゲイツが出資している事も書きました。

その件を勉強する中で、マラリア・ワクチンについても勉強が進みました。

そこで、マラリアのことと、マラリア・ワクチンについて学んだ事を、今回は書きます。

面白かったのは、勉強していたら「イベルメクチン」の事が出てきた事です。

イベルメクチンは、コロナウイルスやコロナワクチン後遺症に効くという説があり、リチャード・コシミズという方はこの薬を激推ししています。

私はその説を遠くから見ている感じでしたが、今回勉強して特殊な薬だという事は分かりました。

〇 三菱化学メディエンス Forum 2007 鈴木守(群馬大学・学長)の講演から抜粋

日本でも明治時代にマラリアの流行があった。

しかし寒冷地のマラリアは撲滅されて、現在は熱帯地にだけ存在する。

スカンジナビア半島や日本に見られたマラリアは「三日熱マラリア」といい、高熱が出たりするが、ほとんど死亡しない。

しかし熱帯地で見られる「熱帯熱マラリア」は、致死率が高い。

マラリアは病名であり、病原体は「マラリア原虫」という。

1881年にマラリア原虫をフランスの外科医がアフリカで発見した。

熱帯熱マラリアは、蚊に刺されてから発病まで1ヵ月以内で、40度の高熱が出て、脳が侵される例も多い。

マラリアを撲滅できないのは、まずマラリア原虫が姿・形や抗原性までも変化させるからだ。

いかなる分子構造が表面に出た時に、どのような病原性を示すかは判明していない。

次に、感染する側のヒトも、栄養状態が悪く免疫が低下していると発病しやすいが、感染して発病しない人もいる。

私がスーダンからチャドの難民部落を調査したところ、子供は100%でマラリア原虫を保有していたが、元気に外でサッカーをしていた。

アフリカのサハラ砂漠以南では、「5歳になる前に5人に1人は死亡する」と言われていて、身体の弱い子は淘汰され、生き残った子は免疫ができて発病しないのである。

マラリア原虫を保有した蚊が人を刺すと、マラリア原虫が体内に入るが、この時は「スポロゾイト」という形態で、1~2分で肝臓に侵入し、そこで増殖する。
しかし、この時期は症状は無い。

1ヵ月以内に成熟して、「メロゾイト」になって赤血球に入る。
すると大量の赤血球が破壊されて、高熱が出る。

この時に蚊がその人を刺して血を吸うと、赤血球も吸収されて、その蚊が別の人を刺すことで感染していく。

1980年代から遺伝子工学が進歩し、遺伝子組み換え技術でマラリア原虫が有する何百という数の抗原物質の分子構造が解明された。

しかしワクチンは出来なかった。

つまり、抗原の分子構造を1つ1つ解明し、その1つ1つをブロックしても、防御の意味は無かった。

向かってくる戦車に対して、小石を1つずつ置いて守ろうとする様なものだ。

これらの研究は方向が誤っていたと思う。

熱帯地では、1年間に2度も3度もマラリアに感染する人がいる。
それは免疫の記憶ができないからだ。

例えば破傷風は、ワクチンを射つと記憶は長くて、20年後くらいに破傷風にかかっても、そこでワクチンを射てばブースター効果で昔の記憶を呼び戻して免疫効果が現れる。

先ほど話したが、スーダンの子供は100%でマラリア原虫を保有している。
しかし大人は保有していない。

これはつまり、子供のうちに何度も感染して、大人になった時には強力な免疫が成立していると仮定できる。

体内に少数の病原体やウイルスがいると、それが刺激になって免疫効果が維持される。

はしかでも、弱毒のウイルスが体内に少数いることで、免疫効果が出ていると言われている。

マラリア原虫にX線を照射して弱毒株に変化させたところ、それをマウスに注入しても発病せず、免疫が成立した。

そのマウスにマラリアの致死株を注入しても、発病しなかった。

弱毒株を注入したマウスは、150日後に致死株を注入しても死ななかった。

しかしそのマウスから脾臓を摘出すると、効果は失われて、致死株を注入すると死亡する。

したがって、免疫メカニズムは脾臓に存在すると判明した。

そこで免疫の成立したマウスの脾臓を摘出し、その脾臓細胞を免疫のないマウスに注入したところ、そのマウスはマラリアで死亡しなかった。

さらにどの脾臓細胞が免疫を担っているかを調べたところ、免疫記憶は「CD4陽性T細胞」が維持していると判明した。

マラリア流行地で患者の血清を採取し、マラリア原虫のどの分子と反応するかを見たところ、48.7kDの部分が最初に強く反応し、治療すると消失していった。
どのマラリア流行地でも同じ反応だった。

その部分の分子解析をしたら、マラリア原虫の産生するエノラーゼという分子だと分かった。

特にAD22の部分が一番重要と分かり、AD22の合成ワクチンを作製した。

サルに投与したところ、分子全体で作製したワクチンは、AD22単独よりも効果が著しかった。

これまでの研究で判明したのは、マラリアは宿主側(感染した人)の要因も大きいという事だ。

(村本のコメント。

私が思うにどんな病気も、その人の栄養状態とか身体の状態や精神状態が、発病するかや重症化するかに大きく影響します。

だから、ワクチンを開発してアフリカの人に射つよりも、アフリカの人々の栄養状態とか生活環境とか精神状態を改善するプロジェクトのほうが、効果が高いと思います。

あと思うのは、上記の研究成果は2007年のもので、かなり研究が進んでいる感じなのに、この下に書いていく現在のマラリア・ワクチンは、全然その研究成果を活かしている感じがありません。

なにをやってんだ?って思うし、きっとビジネス優先でワクチン開発をしているのでしょう。)

〇 NIID国立感染症研究所のホームページ マラリア・ワクチン開発の世界的動向(2018年10月19日の記事)から抜粋

マラリア用のワクチンは、数十年も開発されてきたが、未だに実用化していない。

マラリア原虫は、各発育時期によって発現しているタンパク質が大きく異なる。

したがって、蚊から人への感染を阻止するワクチン、メロゾイトを標的とするワクチン(発病阻止ワクチン)、蚊の体内で発育するマラリア原虫を標的とする伝搬阻止のワクチンの、3種に分けて開発が進められてきた。

1960年代に、放射線の照射で弱毒化したスポロゾイトを使う、「感染阻止ワクチン」の研究がスタートした。

米国やアフリカ諸国で臨床試験(人体を使った実験)が行われるも、効果は十分ではなかった。

スポロゾイトの表面タンパク質(CSP)が抗原と分かったので、組換えCSPを抗原とする「RST,S/AS01」ワクチンが開発されている。

このワクチンは、アフリカの7ヵ国の11ヵ所で臨床試験が行われ、6500名あまりの乳児と、9000名の幼児にワクチンを1ヵ月おきに3回接種した。

その後、20ヵ月目にさらに1回、追加で接種した。

その予防効果は、乳児で20%、幼児で36%で、十分とは言えないが、WHOは実用化を目指して大規模なプロジェクトを2018年から始め、ガーナ、ケニア、マラウイの3ヵ国で人体試験を行っている。

「発病阻止ワクチン」は、抗原はメロゾイトのタンパク質で、ワクチンの臨床試験ではいずれも有効性が無かった。

「伝搬阻止ワクチン」は、米国とマリで臨床試験が行われたが、抗体価の減衰が早く、効果が短い。

2002年のマラリアのゲノム解読の以降は、遺伝子情報が蓄積されてきている。

それをワクチンに利用するには、組換えタンパク質の合成が必須である。

(組換えタンパク質とは、タンパク質を遺伝子組み換えの手法で宿主細胞に大量生産させたものをいう)

〇 BBC NEWS JAPAN 2021年10月7日の記事から抜粋

WHOは2021年10月6日に、世界初のマラリア・ワクチンである「RST,S」(上記したワクチン)について、アフリカの子供への使用を推奨すると発表した。

「RST,S」は、ガーナ、ケニア、マラウイでの試験的な接種プログラムの成功を受けて、WHOがマラリアの感染率が中~高の地域で接種を展開すべきとした。

マラリアは、蚊に刺されることで感染が広がり、繰り返し感染すれば免疫がつくが、重症化の可能性が減る効果しか得られない。

マラリアの寄生虫(マラリア原虫)の種類は100以上あるが、「RST,S」ワクチンは最も致命的な「熱帯熱マラリア原虫」を標的にする。

2015年の治験では、ワクチン接種で重症者10人のうち3人を救ったという。(※つまり30%の効果しかない)

一方でこのワクチンは、効果を得るのに4度の接種が必要で、最初の3回は生後5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月に行い、最後のは生後18ヵ月で行う必要がある。

英国の製薬大手会社の「グラクソ・スミスクライン」が、「RST,S」を開発した。

なお、このワクチンでは防げない別種のマラリアが流行しているアフリカ以外の地域では、このワクチンは使わない。

マラリア・ワクチンの開発は、ゼリーを壁に釘で打ち付けるようなものだ。

「RST,S」が狙えるのは、マラリア原虫のスポロゾイトの段階に過ぎない。
だからワクチンの効果は低い。

〇 日本経済新聞のホームページ 2021年7月27日の記事から抜粋

コロナ・ワクチンを米国のファイザー社と共同で開発した、ドイツの「ビオンテック社」は、マラリア用のmRNAワクチンを開発すると発表した。

2022年末までに臨床試験(人体を使った試験)を開始し、アフリカでワクチン生産をする予定だ。

mRNAの技術を用いた初のマラリア・ワクチンを目指す。

WHOや欧州委員会は、上の計画に対し、各国との交渉や施設の整備を支援する。

アフリカのどこにワクチンの製造工場を造るかは、各国政府と調整中だ。

WHOは有効性75%のマラリア・ワクチンを求めているが、まだ実現していない。

〇 AFPBB news 2021年7月27日の記事から抜粋

「ビオンテック社」は、mRNAの技術を用いたマラリア・ワクチンの臨床試験を、2022年にも開始すると発表した。

mRNAの技術は、ビオンテック社がファイザー社と共に記録的な速さで開発した、コロナ・ワクチンにも使われている。

コロナ・ワクチンは、開発から政府の(緊急)承認まで1年かからなかった。

ビオンテック社は、将来的に様々なワクチンをアフリカで製造・流通(販売)する事を目指しており、アフリカにmRNAワクチンの拠点を置くことも検討している。

〇 Gigazine イベルメクチンはマラリアを20%も減らす 2019年3月19日の記事から抜粋

コロラド州立大学の研究チームによると、『イベルメクチンを服用した人の血液は蚊にとって致命的な毒となり、マラリアを20%も減らせた』という。

イベルメクチンの人体への致命的な副作用は見られず、マラリア対策で有効と思われる。

ノーベル賞を2015年にとった大村智は、1973年から薬に使える物質を生み出す微生物を探す研究をしていた。

そして「ストレプトマイセス・アベルメクチニウス」を発見した。

共同研究をしているMSD(メルク・アンド・カンパニー)と共に調べたところ、この菌が放出する「アベルメクチン」が寄生虫に有効と分かった。

その後、失明を起こす「オンコセルカ症」や、炎症を起こす「リンパ系フィラリア症」の原因になる寄生虫などを殺す薬として、「イベルメクチン」が完成した。

イベルメクチンは、服用すると人間の血液が蚊に対する毒性を持ち、血を吸った蚊が死ぬと分かっている。
(※これは次の記事で詳述します)

マラリアに対しては治験中で、今回は西アフリカのブルキナファソの8つの村で人体で試験を行った。

8つの村に住む590人の子供を含む2700人に対し、半数には3週間に1度投与し、もう半数には投与せず、18週間の経過を観察した。

すると投与しなかった子供は平均2.49回マラリアに感染したが、投与した子供は2回で、感染を20%抑えていた。

薬の副作用は見られなかった。

〇 人民網・日本語版 人の血で蚊を殺せる?科学の力で実現 2018年4月13日の記事から抜粋

英国の研究チームはケニアで、人の血に蚊を殺す毒性を持たせる方法を開発した。

この研究チームは、被験者47人に高濃度のイベルメクチンを毎日600ミリグラムずつで3日連続で服用させた。

すると被験者の血は蚊にとって致命的になり、最長で28日間も維持された。

この血を2週間与えた蚊の致死率は、97%に達した。

さらに別の被験者360人にイベルメクチンを300ミリグラム服用させて、同じく試したところ、蚊の致死率はやや低下した。

マラリアに感染した被験者がイベルメクチンを服用しても、副作用は無かった。
マラリアの拡大を抑制できる可能性がある。

〇 京都大学 理学研究科・理学部 マラリア治療薬・アルテミシニンの発見 から抜粋

2015年ノーベル医学・生理学賞には、大村智、ウィリアム・キャンベル、トゥ・ヨウヨウの3名が選ばれた。

寄生虫が原因の病気の治療薬を開発したのが、受賞の理由である。

大村とキャンベルは河川盲目症(オンコセルカ症)に有効な「イベルメクチン」を、トゥはマラリアに有効な薬を発見した。

ここではトゥに焦点を当てる。

マラリアは蚊を通じて感染が拡大するが、1960年代のベトナム戦争でも兵士の多くが感染した。

当時すでに体内のマラリア原虫を駆除する薬が実用化されていたが、副作用が強い上に、薬に耐性を持つマラリア原虫が現れ始めた。

そのため、ベトナム戦争に参戦していた中国は、新しい治療薬を開発しようとした。

トゥ・ヨウヨウらは、漢方薬がマラリアにも効くのではと考えて研究し、ヨモギの一種からマラリアに効果的で副作用も少ない「アルテミシニン」という物質を発見した。

アルテミシニンは、赤血球に寄生しているマラリア原虫を死滅させる。

薬草からのアルテミシニンの抽出は大変だったが、今ではアルテミシニンを改良した様々な薬が実用化され、マラリアの死者を世界中で大幅に減少させている。

〇村本のコメント

ここまで全部読むと分かると思いますが、マラリアの研究が進み、効果的な薬も誕生しているのに、あえてmRNAの技術で新薬をつくる必要があるのか疑問です。

そこに投じるカネは、アフリカの人々の生活環境を改善する事に振りかえるのが良いでしょう。

勉強していて思いますが、製薬会社はカネ儲けしか考えていません。
そして、製薬会社とツルむビル・ゲイツは、倫理観の欠如した先端技術の盲信者です。

だから彼らに貧困国への支援を任せてのさばらせている限り、アフリカなどの貧者は救済されないです。

次回の日記では、これまでワクチンについて学んできた中で気になったワード(クリスパー・キャス9)なども勉強したので、それを取り上げます。


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