アメリカの現状 惨憺たるもの①

(『チョムスキー、世界を語る』から抜粋)

チョムスキー

1999年のアメリカでは、平均的な家庭の就労時間は、1989年よりも6週間分も増えています。

それにも関わらず、資産の伸びは微々たるもので、借入金はかつてない残高に達しています。

そして貧しい人の割合は、1979年よりも増えています。

今(1999年)は株がブームになっていますが、株の半分近くは1%の大株主が持っており、全株主の80%に相当する人達の所有する株はわずか4%です。

いま挙げた数字は、経済政策研究所(ワシントンのシンクタンク)の発行する「アメリカの労働者情勢」に載っています。

アメリカでも、環境破壊は深刻です。

でも、しつこいプロパガンダが「環境破壊など存在しない。そんなものは狂信的な一部の連中のたわごとだ」と吹き込むのです。

アメリカ人は、こう聞かされています。

「京都議定書の取り決めを守ることは、経済的な打撃になる。

 一番重い負担をアメリカに負わせようとしていて、不公平だ。」

麻薬がらみのマネーの50%は、アメリカの銀行を通過していると見られています。

要するに、麻薬取引の半分は、アメリカがマネー・ロンダリングしているのです。

1980年代の初頭に、この行為をやめさせようとした事がありました。

マイアミ(マネー・ロンダリングで有名な地)の検事たちは、非合法なマネーを動かしている銀行を調査する「グリーンバック作戦」を展開したのです。

この時、副大統領だった父ブッシュが、ただちにこの作戦を中止させました。

一番強い力を持つ国々にとっては、もう国境など無用です。

例えば、アメリカがスーダンの製薬産業を半分つぶしたいと思えば、簡単にそう出来るのです。

(1998年のスーダン爆撃を指している)

アメリカは、アンデス諸国にコカの葉(コカインの原料)を廃棄する政策をむりやり受け入れさせました。

(コカの木を枯らすために)毒物の散布が行われたときには、他の作物までダメにされました。

(これについては、プラン・コロンビアを見るといいです)

麻薬問題については、禁止したり廃棄するよりも、患者の治療や予防措置の方が効果があります。

ところがアメリカでは、こういう措置はほとんど講じられないのです。

アメリカの1998年の国政選挙では、当選した候補者の95%が「選挙運動にライバルよりも多額のカネを使ったこと」が分かりました。

このカネのほとんど全部が、実業界から出ています。

つまり、『民間企業が議会の95%を買収した』のです。

しかし誰も、これを「腐敗」とは呼びません。

きわめて悪質なのは、「社会福祉の予算を減らそう。恵まれない人たちは、援助に頼らないでやっていく事を学ぶために、難民やホームレスを見習って食糧配給券を受け取るようにしよう。」などと平気で主張する輩です。

(2014.5.23.)


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