○ これからは、どういう社会を目指すべきなのか
『もう学歴社会は、終わりにしよう①』では、学歴社会の歴史についてと、学歴システムがもう機能していない事を、解説しました。
では日本は、これからはどういった社会を創っていくべきなのでしょうか。
まず言える事は、「これだけ人々が長寿化した以上、人間を評価するには長い目で見る必要がある」という事です。
昔と違って、50代、60代になっても元気一杯の人が、かなりの数います。
また、本人に情熱があれば、何歳になっても学問・勉強を出来るシステムが、すでに社会全体として出来上がっています。
この事を考えれば、「20歳前後の時点で、その人の能力や可能性を判定する」という現在の学歴システムは、もう明らかに時代に合致していません。
今までよりも柔軟に、『何歳になっても、その人を評価し直せる』かたちにする必要があると思います。
これからは、それまでの肩書きとか年齢よりも、その時点での能力・やる気を重視していく事を、提案します。
今の『学歴システム』は、日本人のやる気や可能性を奪っている元凶、日本の病巣になっています。
その事を掘り下げると、「学歴で一度決まった人間の格差が、その後にどうやっても埋まらない」ことが、根本的な問題です。
現在のシステムだと、「高学歴の者と、低学歴の者は、違うコースを走り」、社会に出てからの努力が正当に評価されません。
そのために、高学歴の者は堕落しやすいし、低学歴の者は「私には可能性が無い」と考えて、努力をしなくなってしまいがちです。
この事が、日本全体の活力の低下につながっています。
ですから、まずは『どのような学歴の者でも、全員が同じコースで走り、そこで競争をするシステムにすること』が、大事だと思います。
私の考える新しいシステムを、マラソンで説明しましょう。
高学歴の者と低学歴の者が最初から違うコースを走るのは廃止にして、全員が同じコースを走る。
これは、公平さとやる気を確保するために絶対に必要です。
社会に出るまでに努力して実力のついた者は(学生時代に良い成績を出した者は)、5キロとか10キロの地点からスタート出来るかたちにすれば、ちょうどいいです。
そして、20キロとか30キロとかの各地点で、努力の結果を見て、その人を再評価すればいいのです。
私は、官界などの『キャリア制度』は完全に廃止するべきだと提案します。
この制度は、『もう学歴社会は、終わりにしよう①』に書きましたが、まだ貧しく余裕のなかった明治時代の日本が、過渡的なものとして採用した制度です。
現在はたくさんの人が高度な教育を受けているし、何歳になっても好きなように学問・勉強が出来る環境があるのですから、キャリアそのものが必要ありません。
純粋に、その時々にそのポストにふさわしい人を、起用していけばいいのです。
私は、長い目で見れば、競走する社会ではなく、『共生する社会』を目指すべきだと考えています。
これだけ、価値観や職業や、人々の興味・趣味が多様化してきているのだから、もう何かの一つの型にはめて人を判断する事は、ふさわしくないです。
競争をあおるのではなく、別の道を歩む人を、大きな視点に立って評価できる人間を育成する事が、これからの時代にはとても大切だと思います。
○ 日本が新しいシステムに踏み出すには、何が必要か
ここまで書いてきた事には、多くの人が同意できると思います。
はっきり言って、ほとんどの人は「現在の学歴社会は、上手く機能していない事」に気付いています。
多くの人が、「高学歴の人のほうが世間知らずで、柔軟性や人間性が無く、実際には人の役に立たない」とぼやいているではないですか。
しかし、多くの人が現在のシステムにしがみ付いて、離れようとしません。
一体なぜなのでしょうか。
その理由は、「学歴システムが無くなると、基準が無くなる」とか「今のシステムで、それなりに良いポストを得ている」という考えが、多くの人にあるからだと思います。
要するに、新しいシステムになった時に、今より良くなるという確信が持てないのです。
私は、今のシステムよりも、私の提案するシステムの方が、絶対に日本人は幸福になると確信しています。
なぜなら、私の提案するシステムの方が「機会の平等がある」し、「人間の可能性に開かれている」し、「人々のやる気を喚起できる」からです。
新しい世界に踏み出すのは、誰でも怖いものですが、しっかり考えた上で踏み出せば、長い目で見れば必ず上手く行きます。
それは、ある程度以上の人生経験をした人なら、誰でも実感した事があると思います。
ですから、踏み出すのに必要な事は、まずは『本当に今の状態で自分は満足しているのか、しっかりと考えること』です。
次に、「今の状態には満足していない」という結論が出たら、『人の意見よりも、自分の経験や感覚を信じること』です。
今の学歴社会に満足している人はともかく、満足していない人は声を挙げましょう。
新しい世界を実現できる環境は、すでにととのっています。
最後に余談を一つ。
現在のアーティストのプロフィールは、どこどこの学校を出て、誰々に学んで、誰々と共演して、という内容が多いです。(特にクラシックの音楽家に多い)
これも、一種の学歴システムだと思います。
しかし、芸術にそんな事が関係あるとは、私は全く思いません。
芸術は、過去や肩書きから判断するものではないからです。
アーティストは、「自分がなぜこの道を選んだのか」と、「現在と未来にどういう活動をしていきたいか」を何よりも語るべきだし、それを語れば他は要らないと思います。
大きく捉えれば、これは芸術だけではなく、すべてに当てはまると思います。