(『ダブルクロス アメリカを葬った男』チャック・ジアンカーナ著から抜粋)
1954年の春、アメリカ政府はムーニーの指摘した方向(さらなる外国への介入と侵略)に進んでいた。
3月にグアテマラにおける共産主義の脅威について、アメリカ政府で協議されたが、ムーニーは「俺たちが面倒をみることになる」と得意気に言った。
4月になると、アイゼンハワー大統領はスピーチを行い、東南アジアの状況をドミノ倒しにたとえた。
アジアで1国の共産化を許せば、残りの諸国も共産化するというのだ。
これを聞いたチャックは、ムーニーに本当にそうなるのか尋ねてみた。
ムーニーは真剣な顔で言った。
「あんなたわ言を信じているんじゃないだろうな?
共産主義の脅威とは、CIAが扇動して騒ぎを起こし、アメリカが出ていく口実にするためのものさ。
しかし、国民はそれに飛びつく。そうだろ?」
「でも、共産主義があるのは確かだし、共産主義者は世界を手に入れたがってる。」チャックは反論した。
「またテレビを見すぎたな、ええ?
もっと利口になれ。アメリカだって何もかも手に入れたがってるさ。
そしてアメリカの権力者どもは、アジア人やメキシコ人がどうなろうと気にも留めるものか。
奴らの狙いは自分のポケットを膨らますことだけだ。
ふん、グアテマラの混乱だけでも、百万長者になれるぜ。」
「それじゃ、グアテマラについて知ってる事を話してくれよ」
ムーニーは辺りをはばかる様子で語った。
「アメリカ政府は、グアテマラでの騒乱を望んでる。
しかし反乱を起こすには銃が必要だ。
そこで俺たちが、南部の仲間から調達してやるのさ。」
「どうしてアメリカ軍にやらせないんだい?」
「そんな事をしたら、企みがバレてしまうだろ。
このイカサマはトップ・シークレットだぜ。」
(2018年10月28日に作成)