(『ダブルクロス アメリカを葬った男』チャック・ジアンカーナ著から抜粋)
1960年のクリスマスの頃、ムーニーはチャックに『CIAとシンジケートの共同作戦』について話した。
「去年の8月以来、CIAと話を進めてきたが、結局キューバのカストロとドミニカ共和国のトルヒーヨ、それにコンゴの指導者(パトリス・ルムンバ)を殺ることになった。
だがカストロを殺るのは大仕事だ。
すでにサントス・トラフィカンテらは痛い目に遭っている。
カストロは、アメリカの暗黒街がキューバから亡命した連中としっかり繋がってる事も承知しているはずだ。
俺たちはCIAに協力して、反政府ゲリラだったカストロに武器を供給して支援した。
奴が政権をとったあかつきには、俺たちのキューバでの事業に便宜をはかってくれると思ってな。
ところが奴には恐れ入るぜ。『アメリカ人なんて皆がいかさま師かポン引きだ』とぬかしやがる。」
「なかなか鋭いアメリカ人評だな」
「まあな。カストロは、そこいらの替え玉人形とはわけが違う。
CIAもやっとそこに気付いた。
このままじゃ、カストロにアメリカのビジネスを駄目にされる。
現に俺たちもCIAも、(キューバの)カジノの上がりの分け前を無くしてるんだ。
だからCIAは、俺たちに15万ドルでカストロを殺ってくれと持ちかけてきた。
はした金もいいところだ。
しかし俺は言ってやった。この際、報酬の多少は問わんってな。」
シンジケートが、外国元首の殺害をアメリカ政府から金で依頼されたという話は、チャックには信じがたいものだった。
アメリカ政府への怒りと不信感がこみ上げてきた。
ムーニーによると、カストロ抹殺を最初に思いついたのはアレン・ダレスCIA長官であり、部下のリチャード・ビッセルとシェフィールド・エドワーズが作戦の指揮官に選ばれた。
そしてシンジケートとの連絡役には、ボブ・メイヒューが起用された。
「ボブ・メイヒューは元FBIで、表向きの商売は私立探偵だ。
奴は今、ティームスターズの弁護士をするウィリアムズの仕事も手伝ってる。
ガイ・バニスターもメイヒューも、常時CIAの仕事を手伝ってる。」
ムーニーは、配下のジョニー・ロゼリの紹介で初めてメイヒューに会うと、ロゼリをメイヒューやCIAとの仲介役にした。
さらに配下のジャック・ルビーを密輸の仕事に戻し、フランク・フィオリーニやデイブ・フェリーと共に密輸事業にあたらせた。
(2018年11月9日に作成)