(『ダブルクロス アメリカを葬った男』チャック・ジアンカーナ著から抜粋)
ムーニーは、ヴォーカル・トリオのマクガイア・シスターズにいるフィリス・マクガイアを恋人にした。
マクガイア・シスターズは『シュガー・タイム』などのヒット曲でスターになったが、1958年にムーニーはフィリスを口説き、プレゼント攻勢をかけてギャンブルの負債も肩代わりしてやり、有名ナイトクラブの契約も取りつけてやった。
ムーニーにとっては、有名人のフィリスを連れていることで注目されるのが快感だった。
フィリスはうぶな田舎娘という触れ込みだったが、実際には贅沢三昧が好きだった。
チャックとその家族は、1959年にフィリスに引き合わされて以来、ムーニーと彼女を郊外の自宅でしばしばもてなした。
チャックの見るところ、フィリスは美人だが子供じみていて、考えることに向かない娘だった。
これはチャックには何の不思議もなかった。ムーニーは1度として知性豊かな女を周囲に置いたことはなかった。
2人の関係が進展するにつれ、ムーニーは牧場からアパートまで彼女に買い与えるようになった。
ムーニーは「フィリスは大金を稼いでいるが、ありったけを服に注ぎ込んで、いつもぴいぴいしている」とチャックに愚痴をこぼした。
ムーニーはこれまで車一台、自分名義にしたことはなかった。
すべて配下や家族の名義にしていた。
彼は多くの宝石や株をフィリスの名義にしたが、その見返りとしてフィリスの名前やクレジットカードや電話番号を使って、FBIを出し抜こうとした。
(2018年11月11日に作成)