チャックは違法ピンボール機に精を出し、アン・マリーと結婚する

(ダブルクロス アメリカを葬った男 チャック・ジアンカーナ著から抜粋)

1947年も後半を迎えた頃、チャックはムーニーからマルケット地区での違法ピンボール機の設置を任された。

ムーニーによると、その一画はアンディ・エイキンズ警察署長がシンジケートの活動を陰に陽に守っている。

実際にチャックは、サツの妨害なしに200ヵ所以上にピンボール機を設置できた。

この仕事だけでチャックは12万ドルの利益を稼ぎ出した。

稼ぎがいいので至高の幸福感に浸っていたが、ムーニーが事あるごとに口にし始めた。

「チャック、お前も25歳だ。金もできたし、イタリア女と郊外の家、それに騒々しい
 子供たちが必要だな。」

そしてムーニー夫妻は、アン・マリー・トルシエッロを紹介してきた。

トルシエッロ一家の暮らしは4年前と変わりなく、カールは今も操車場で汗を流していた。

チャックは4年ぶりにアン・マリーに会ったが、17歳になった彼女は初々しい美人に変身しており、一目惚れしてしまった。

その後、2人はデートを重ねた。

1949年5月に、チャックとアン・マリーは結婚した。

シカゴ・シンジケートのボス達がお祝いに集まった。

さらにムーニーの部下たちも集まった。

副官のファット・レナードらに加えて、賭博補佐のロッキー・ポテンザ。

高利貸し兼取り立て屋のティーツ・バタリア、南地区の賭博係フランク・カルーソ、暗殺者兼たかり屋のジョーイ・ディヴァルコ。

殺しの他に売春・タバコ・ピンボールも扱うウィリー・ポテトズ。

労働組合関係の暴力係フィフィ・ブッチェリ。政治フィクサーでジュークボックスも扱うブッチとチャックのイングリッシュ兄弟。

出席者には、アンディ・エイキンズ警察署長や検事の姿もあった。

ムーニーから金の運び屋を任されているカトリック司祭のキャッシュ神父もいた。

さらにスーパーゲストとして、ジョー・E・ルイスも出席していた。

ルイスがマイクを取って「おませなロージー」を歌い出すと、ムーニーがくすくす笑って側にいるチャックに言った。

「俺とルイスは昔ちょっとあってな」

「へえ、ルイスと?」チャックは驚いて言った。

「27年前、俺のボスだったジャック・マクガーンがルイスのことで頭に来てな。

 ルイスは大物になるとケチな舞台を馬鹿にするようになった。そしてマクガーンの
 クラブを辞めて別のクラブに移ろうとした。

 マクガーンはかっとなって『出て行ったら生かしちゃおかねえ』と脅した。
 だがルイスは出ていっちまった。

 マクガーンは言ったことは実行する人間だ。俺とニードルズ・ジアノーラと
 もう1人若いのを、野郎の所に送り込んだ。」

ムーニーはにんまりして続けた。

「ピストルで徹底的に殴って、喉だってめった切りよ。

 解放してやった時にゃ、奴の舌は皮一枚で繋がってるだけで、口からだらんと
 垂れてやがった。

 生きてんのが不思議だぜ。まして歌なんか歌えるとはな。」

ムーニーは得意気に話を続けた。

「この話は野火のごとく広まって、俺たちに逆らう芸人なんて1人もいやしねえ。

 特にルイスは俺には金輪際逆らわねえ。

 今じゃあの男も分をわきまえてる。俺たちは丁重に扱ってるし、お互いに
 ただのビジネスだ。」

何という異常な世界だろうと、チャックは思った。

ルイスとムーニーはいつも親友のように振る舞っている。

ムーニーは何もかも計算ずくで、相手の弱さを見逃さない。

誰が操りやすいか、誰がとことん吸い上げやすいかを、すぐに見抜いてしまう。

チャックが新婚旅行から帰ってくると、ムーニーから悪い話をきかされた。

「ピンボールの機械は引っ込めろ。倉庫にでもしまえ。

 お前の担当してる地区で面倒が起こりそうだ。その間、労働組合へ行って、
 映画技師の仕事でももらえ。」

この頃、シカゴ教区のストリッチ枢機卿が始終ムーニーの所へやって来た。

ムーニーが金の運び屋として使っているキャッシュ神父は、バチカンのマネーロンダリングにも関わっていた。

シカゴ出身の若い司祭ポール・マーシンカスは、1952年にストリッチの支援でバチカンに送りこまれた。

マーシンカスは出世していき、バチカン銀行の総裁にまでなるが、国際的なマネーロンダリングに関わったと糾弾され、教皇ヨハネ・パウロ1世の暗殺に加わったと疑われることにもなる。

(2018年10月17日に作成)


ケネディ大統領の暗殺事件 目次に戻る