アメリカの赤狩りやアジアでの戦争について

(『ダブルクロス アメリカを葬った男』チャック・ジアンカーナ著から抜粋)

1949年と50年は、チャックは映画技師として働いた。

たまにムーニーから電話がきて、運び屋の仕事をすることもあった。

チャックは稼ぎの少なさにウンザリし、「何か事業をやってみたい」とムーニーに相談した。

返事は「何かあったら知らせる」だった。

1950年の2月になると、世間では『赤狩り』をするマッカーシー議員の話題で持ちきりだった。

チャックはある日、ムーニーに聞いてみた。
「マッカーシーは金じゃ動かない男だろ?」

ムーニーは鼻で笑って言った。

「マッカーシーは使える野郎だ。国民の怒りを煽ってくれる。

 いいか、物事は見かけ通りじゃない。

 アメリカが支援してる蒋介石、あいつも悪党で中国のギャングだ。
 アメリカとの繋がりは、マッカーサー元帥との付き合いにさかのぼる。

 アメリカの上層部の奴らは、必要とありゃ敵をこしらえる。

 そこで、当面の敵が赤の奴らというわけだ。

 CIAが赤の脅威を煽れば、片やマッカーシーは国民の怒りを
 かき立てる。
 で、しまいにゃ戦争だ。

 政治家たちの半数は、隠れてアジアなどに投資している。

 投資先に火の粉がかかったって、大統領が片をつけるって寸法だ。

 とにかくでかいヤマだからな。」

「ヤマってのは?」チャックはムーニーの話に釣り込まれて訊いた。

「狙いは安い労働力、言ってみりゃ『奴隷労働力』だ。

 不動産に投資してる奴もいる。」

「社会主義国はどうなんだ? 国民の利益を考えるんだろ?」

ムーニーは哄笑した。

「新聞の読みすぎだな。
 どんな政府も、下の連中が虐げられようが構いやしねえ。

 民主主義なんざお題目にすぎん。結局は金と力だ。

 いいか、全てビジネスなんだ。

 俺たちのフィリピンの仲間は、アヘンの売人たちと渡りをつけた。

 だから今にニューヨークも餌食だ。ヤクをやる黒人がはびこってる
 からな。」

「アヘンだって? ヤクには手を出さないんじゃなかったのかい?」

「黒人が欲しがるとなっちゃ、誰かの調達が必要になるだろ。
 そこで俺たちの出番になる。

 どうってことはない、アジアよりはマシだ。

 アジアじゃ猿の脳みそを食うわ、蛇の血まで飲むわ、
 犬も赤ん坊も食べちまう。

 日本にはヤクザという犯罪集団がいるが、これがまた汚い連中で、
 金のためなら何でもする政府とつるんでいる。」

1950年5月になると、米国務長官が声明を発表し、「アメリカはフランスと共にインドシナの防衛にあたる」と宣言した。

さらに6月には、「北朝鮮の侵攻を受ける韓国に、米軍を派遣する」とトルーマン大統領が表明した。

トルーマンがマッカーサーを総司令官に任じ、マッカーサーが蒋介石との協議に臨むと報じられても、もはやチャックは驚かなかった。

(2018年10月17日に作成)


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