(『ダブルクロス アメリカを葬った男』チャック・ジアンカーナ著から抜粋)
1953年の感謝祭に、ムーニー夫妻はジアンカーナ一族を夕食に招待した。
チャックは、自分の子供たちが心配だった。
というのも、ムーニーは子供が相手だとどう話していいかさえ知らなかったからだ。
チャックはこれまで一度も、ムーニーが実の娘でさえ抱きしめるのを見たことがなかった。
それどころか、罵ったり、からかったりして、子供の根性を試そうとするのだ。
この感謝祭も例外ではなく、子供たちが全員揃うとすぐ、ムーニーは腰のベルトを外した。
「やいガキども。お前らいったい何をしてやがるんだ?」と、彼は荒々しく言った。
イートンスーツを着た4人の男の子は立ちすくんだ。
「俺について来い。今すぐだ。」ムーニーは厳しく言った。
子供たちはじっと立ったままで、顎が震えていた。
ムーニーは声をさらに張り上げ、甲高い声で叫んだ。
「今すぐ、俺はそう言ったぞ」
親たちは誰もとりなそうとしなかった。ムーニーのゲームを邪魔するのが怖いのだ。
子供たちはべそをかきながら、居間に追い立てられていった。
「ガキども、これが見えるか?」怒ったふりをしながら、ムーニーはベルトを振ってみせた。
「俺の言う通りにしなかったら、こいつを食らわせてやるからな。聞いとるのか?」
子供たちはビクビクしながら頷いた。
「ここへ座れ」ソファを指さして、彼は命じた。
「ちょっとでも動くんじゃないぞ」そう言ってベルトを自分のズボンの上に振り下ろし、ビシッと鋭い音を立てた。
子供たちは泣き出した。
「お願い、やめてよムーニーおじさん。僕たちいい子にするから、約束するよ。」
チャッキー(チャックの息子)が訴えると、他の子たちも黙って頷いた。
泣くまいと堪えようとしたのはえらい、と後でムーニーは言った。
しかしチャックに次のように語った時、彼の声には失望の響きがこもっていた。
「小さくても男らしい奴を連れてきてもらいたい。
根性のあるガキを待ってるのさ。
あんな泣き虫じゃない。
そんな奴が現れたら、俺たちが居なくなった後を安心して任せられる。」
(2018年10月24日に作成)